猫の慢性腎臓病の意外な原因

2022/3/19

ネコちゃんにとって慢性腎臓病はまさに宿命とも呼べる病気です。
5歳以下では約40%15歳以上では約80%の猫ちゃんが慢性腎臓病になっていると言われており、死亡原因としては、腎臓病は腫瘍に次いで2位になっています(統計によっては逆転して1位になることもあります)。
慢性腎臓病の詳しい話は『慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease;CKD)』をご覧ください。

犬などの他の動物に比べてネコちゃんで腎臓病が多いのには色々な原因があると言われており、まだ仮説の域をでないものもたくさんありますが、近年は研究が進み、その原因も少しずつ分かってきました。
2016年に9歳以上の猫148頭を調査してどんな子が慢性腎臓病を発症しやすいのかを調べた研究が発表されました。
今日はこの研究の結果から、慢性腎臓病になりやすい子の特徴をご紹介します。

 

 

◇年1回または頻回なワクチン接種

この研究では、ワクチンを毎年、もしくはそれより多い頻度で接種したネコちゃんでは、慢性腎臓病の発生率が5.68倍に上昇したそうです。
少ない頻度では特に差はなかったそうなので、ワクチンはできる限り少ない頻度で接種するのが良いかもしれません。

え!?ワクチンって毎年接種するものじゃないの?って思われる方もきっといらっしゃいますよね。
昔はワンちゃんもネコちゃんも当然のように毎年ワクチンを接種していました。
しかし、近年では研究が進み、ワクチンの種類によっては数年に一度の接種でもある程度免疫が維持されるものがあることが分かってきました。
また、低頻度ではありますが、ワクチンを接種することで起きる有害事象も詳しく分かってきました。今回の慢性腎臓病の発生率の上昇もその一つと言えるかもしれません。
これらのことを踏まえWSAVA(世界小動物獣医師学会)では2015年に「犬と猫のワクチネーションガイドライン」を作成し、この中でワクチンの接種間隔は(感染症のリスクがない場合は)3年以上が推奨されています。

最近のネコちゃんは基本的に家から出ず、他のネコちゃんと接触する機会も少ないので、ワクチンはほとんど必要ないとも言えます。ただ、誤って家から出てしまったり、災害で一緒に避難したり、動物病院に行ったりなど、家の外で病原体に曝される可能性も全くないとは言い切れませんので、念のため低頻度でワクチンを接種しておくのが良いかもしれません。

 

 

◇歯科疾患

この研究では慢性腎臓病の発生率が、
中等度の歯科疾患を持っているネコちゃんでは、13.83倍に上昇し、
重度の歯科疾患を持っているネコちゃんでは、35.35倍に上昇したそうです。
(歯科疾患とは主に歯石、歯肉炎、歯周炎、口内炎のことです。)

歯科疾患ではワクチンとは比べ物にならない程、慢性腎臓病の発生率が上昇していますね。
歯科疾患の多くで歯周病菌による感染症が起こり、細菌や炎症に伴う様々な物質が血流に乗って腎臓に行き、腎臓を障害することが分かっています。
もちろんこれは腎臓に限らず、心臓や肝臓など様々な臓器で起こりえます。

ただ、この研究の結果を見ると腎臓への悪影響はかなり大きいと考えられるので、腎臓病が多いネコちゃんでは歯科疾患は特に気を付けたい病気です。
歯周病は2歳以上のネコちゃんの約70%が持っていると言われており、非常に多い病気です。
そのため、デンタルケアによる予防が重要ですが、中程度以上の歯周病の場合は歯科処置が必要となります。
現在は歯ブラシ以外にも様々なデンタルグッズがあり、どうしても歯磨きできないネコちゃんでも他の方法でデンタルケアを行うことが可能です。

 

 

今回ご紹介した研究から慢性腎臓病になりやすい子の特徴として『頻回なワクチン』『歯科疾患』が考えられましたが、他にもまだ知られていない多くの特徴があるかもしれません。
今後研究が進み、少しでも慢性腎臓病の発生率が減っていくことに期待したいですね。

一覧