犬と猫にも認知症?

2023/1/1

認知症ってご存知ですか?
ほとんどの人は名前くらいは聞いたことがありますよね。実際に認知症の人と接した経験がある人も多いと思います。
では、犬や猫などの動物にも認知症があることをご存知でしょうか?

同じ生き物ですから年を取って脳が衰えると認知症にもなるだろう、と想像できそうですね。ではそもそも脳が衰えるとはどういうことで、どんな症状が出るのでしょうか?
今回はそんな犬と猫の認知症についてお話します。

 

◇認知症とは

認知症とは、正式には『認知機能不全症候群』という名前の病気で以前は痴呆症とも呼ばれていました。(現在は痴呆という言葉は使わないことになっています)
老化に関連していて、認知力の低下、刺激への反応の低下、学習・記憶の欠損といった様々な症状を起こします進行が非常にゆっくりという特徴があり、一緒に暮らしていると正常な『老い』だと思ってしまうため、早期に気づくのが難しい病気です

犬では11~12歳の約28%、15~16歳の約68%が認知症になっていると言われており、猫では11~14歳の約30%、15歳以上の約50%と言われています

症状は様々ですが、大きく以下の6種類に分類されています。
見当識障害:よく知っている人・同居動物・場所などを認識できなくなる、よく知っている場所で迷子になる
相互反応変化:挨拶行動や遊ぶことへの興味の低下、過剰な依存や要求吠えの増加、無駄吠え、無駄鳴き
睡眠サイクルの変化:眠りが浅い、夜中の徘徊、昼間と一日の睡眠時間が長くなる
トイレトレーニングを忘れる:トイレ以外の様々な場所での排泄、排泄要求の減少、外出の機会があるにもかかわらず家の中で排泄する
活動の変化:徘徊や常同行動の増加、落ち着きが無くなる、沈鬱または無関心
不安:今まで平気だった行動や状況に対して不安を感じるようになる

 

◇認知症の原因

動物は日常的に『フリーラジカル』という色々な物質を酸化させる毒を体内で作ったり、取り込んだりしています
若齢期はDHAやEPAといった抗酸化成分が十分に存在しており、この成分がフリーラジカルを減少させ、かつその酸化という作用を抑えることで脳の健康を維持しています。

加齢によって抗酸化成分が不足してくると、フリーラジカルが増加し、脳神経細胞や脳血管にダメージを与えたり、神経伝達物質を減少させたり、抗酸化成分を低下させたりします
これによって、脳の機能が障害されていくと、いずれ認知症を発症してしまうことになります。

 

◇認知症の診断

認知症の症状は行動の変化のみで、血液検査や画像検査などの検査で異常が出ることはないので、診断は問診が重要となります。(MRI検査では脳の異常が認められる場合もあります)
その際、行動の変化を詳細に把握するために専用の質問票を使うこともあります。
質問票の結果から認知症が強く疑われ、他の病気(特に神経疾患や内分泌疾患)や他の問題行動ではないと判断された場合に認知症と診断されます。
質問票はいくつか種類があり、病院によって異なりますので、かかりつけの動物病院に相談してみてください。

 

◇認知症の治療

認知症は完治させることのできない進行性の病気です。
ですので、治療は認知症の進行を緩め、動物と人の生活の質を向上させることが目的となります
認知症の治療は大きく4つに分けられ、環境修正行動修正栄養的介入薬物療法があります。

 

環境修正
ストレスが脳に負担をかけることで認知症を悪化させるため、生活環境をストレスのないやさしいものにしてあげることが重要で、これを環境修正と言います。
代表的なものは以下の通りです。
・滑らないように、床や足の裏に滑り止めをつける。
・迷子や衝突を防ぐために、通路の障害物をなくし、家具の配置は変えないようにする。
・嵌り込んでしまうような角や隙間を無くす。
・行きやすい場所にトイレを設置する。

 

行動修正
認知症の悪化を防ぐためには脳にストレスをかけないことが重要ですが、適度な刺激を与えることは症状を改善すると考えられており、これを行動修正と言います。
代表的なものは以下の通りです。
・叱らない。
・適度な運動(散歩、登る、爪とぎなど)。
・知育トイなどを用いた頭を使うトレーニング。
・日光浴(特に朝)。
・頻繁にトイレに連れていく。

 

栄養的介入
加齢によって不足してくる抗酸化成分や脳機能に良い栄養素を含んだサプリメントやフードを与えることを栄養的介入と言います。
代表的な成分は以下の通りです。
・脂肪酸(DHA、EPAなど)
・中鎖脂肪酸
・リン脂質(フォスファチジルコリン、フォスファチジルセリンなど)
・ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA
・葉酸
・コエンザイムQ10
・フェノール類(フェルラ酸、フラボノイド類など)
近年は上記成分を含むサプリメントやフードはたくさんの種類があり、実際に効果が証明されているものとそうでないものがありますので、使用する場合はかかりつけの動物病院に相談してみてください。

 

薬物療法
認知症の症状が悪化し、動物やそのご家族のQOLが下がるような時は薬物療法を行う場合もあります
薬物療法には2種類あり、認知機能不全治療薬によって脳内の神経伝達を助けることで認知症を改善する治療と認知症の症状(不眠や不安など)を睡眠薬や抗不安薬によって抑える対症療法です。

  

  

簡単ではありますが、今回は動物の認知症についてお話しました。
ずっと一緒に生活していると初期の認知症に自然に気づくのは難しいので、時々愛犬や愛猫に認知症の症状がないかを確認してみてください。
また、できるだけ早期に発見するためには、10歳を超えたら半年おきに病院で診察を受ける、というのも良いかもしれません。
これが少しでも認知症の早期発見に役立てれば幸いです。

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