本当は怖い『マダニ』の話

2022/6/20

みなさんは『マダニ』を実際にご覧になったことはあるでしょうか?
お話を伺っていると実際にマダニを見たことのある方はあまり多くないようですが、ワンちゃんの皮膚にいぼのようなものがあり、よく見るとマダニだった、というのはよくある話です。動物だけではなく、実際にご自分にマダニが寄生したことがあるという飼い主様もときどきいらっしゃいます。
今回はそんな少し珍しいけど確実にいる『マダニ』についてお話します。

 

マダニの生態

マダニは大きな分類ではクモの仲間で形もよく似ていますが、大きさは1~3mmほどで非常に小さい生き物です。栄養源は動物の血液で、動物に寄生し吸血することで成長していきます。
まず地面で卵から孵化したばかりのマダニは幼ダニと呼ばれ、草や木に登り動物に接触する機会を待ちます。
動物に接触するとその動物に乗り移り、皮膚に寄生します。およそ3~7日間吸血を行い、満腹になると地面に落ちます。最大まで血を吸い終わる事を飽血(ほうけつ)すると言い、この状態では大きさは1cm以上になります
飽血して地面に落ちた幼ダニは血を消化しながら脱皮し若ダニへと成長します。
その後は同じことを繰り返して若ダニから成ダニへと成長します。
成ダニも同じように動物に寄生しますが、およそ7~14日間の吸血後に地面に落ち、雌の場合は最大で3000個もの卵を産卵すると言われています。

 

マダニが運ぶ感染症

マダニに吸血されると貧血、皮膚炎、マダニ麻痺症といった問題を起こすことがありますが、最も注意しなくてはいけないのが感染症です。
マダニの吸血時にマダニの中に存在する微生物やウイルスが体内に侵入することがあり、
この中には致死率の高い感染症や人にも感染する感染症があります。
マダニによる主な感染症を簡単に紹介します。

バベシア症
バベシアという原虫が犬に感染し、溶血性貧血などの症状を示します。
重症化すると、重度の貧血、黄疸、多臓器不全が起こり、死に至ります。
犬に感染するバベシアは人には感染しませんが、人に感染するバベシアも存在します。
人では、発熱、頭痛、筋肉痛、貧血などの症状を示します。

ライム病
ボレリア菌という細菌が犬に感染し、発熱、元気・食欲の低下、運動失調(フラフラする、立てない)などの症状を示します。人にも感染します。
北海道での発生が多いという特徴があります
人では、紅斑、発熱、関節痛、皮膚炎などの症状を示します。

エールリヒア症
エールリヒアという細菌が犬に感染し、発熱や出血などの症状を示します。
犬に感染するエールリヒアは人には感染しませんが、人に感染するエールリヒアも存在します。
主にアメリカで発生しており、日本での発生例はありません。しかし、エールリヒア自体は日本にも存在しているので注意が必要です。
人では、発熱、頭痛、筋肉痛、倦怠感などの症状を示します。

Q熱
コクシエラという細菌が猫に感染し、ほとんどは無症状ですが、発熱や元気・食欲の低下などの症状を示すことがあります。
人にも感染し、発熱、咳、呼吸不全などの症状を示します。

日本紅斑熱
日本紅斑熱リケッチアという細菌が犬に感染しますが、症状を示すのかは不明です。
人にも感染し、紅斑、発熱、頭痛、倦怠感などの症状を示します。

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
SFTSウイルスが犬や猫に感染し、発熱、元気・食欲の低下、嘔吐などの症状を示します。
人にも感染し、発熱、頭痛、倦怠感などの症状を示します。
発症した場合の致死率が高いという特徴があり、ある報告によると人で27%、犬で約40%、ネコで約60%だったそうです。また、感染した犬や猫から人が感染したとされる例もあります。

 

マダニの予防法

草がある場所にはマダニがいる可能性があり、もし寄生された場合はご紹介したような怖い感染症にかかってしまうかもしれません。そして、それらの感染症は犬や猫だけではなく人もかかり、最悪死に至るものもありますので、予防が非常に重要です。

マダニの寄生やそれによる感染症の予防法として、
・マダニを避ける(草への接触を避ける、肌の露出を避ける、忌避剤を使う)
マダニ駆除薬を定期的に使う
寄生したマダニを早期に発見する ※除去は病院でしてもらう。
・動物の健康状態の変化に注意する
感染動物(マダニも含む)の体液(血液、唾液、尿、糞便、嘔吐物など)に触れない
・感染動物からの咬傷に注意する
などが挙げられます。

マダニによる感染症は通常は吸血によって感染しますが、実際にマダニが吸血を始めてからどれくらいで感染するのかはあまり分かっていません。バベシア症やライム病は研究が進んでいて、その病原体は吸血開始から48時間以降に感染することが分かっています。しかし、多くの感染症に関しては、それが不明ですので寄生しているマダニはできるだけ早期に発見し、除去しなければなりません
散歩などの外出から戻った際はよく皮膚を触っていただいたり、ブラッシングをしたりしてマダニが付いていないかをチェックしてあげてください。
ただし、マダニを見つけてもご自身で除去するのは危険です除去する際にマダニを傷つけて体液が出ると病原体が感染する危険性があります。また、マダニは顎で皮膚に強く噛みついているので、上手に取れないとその顎だけが皮膚に残ってしまい、皮膚炎の原因になる事があります

マダニ駆除薬はお手軽かつ信頼性の高い予防法です
費用はかかりますが1カ月に一度だけ投与するだけなので手間もかかりません。製品によっては3か月に1度で良いものもあります。
マダニ駆除薬は『内服薬』と『滴下薬』の2種類があり、またその効き方から皮膚に接触すると駆除されるタイプと吸血をすると駆除されるタイプがあります。

 

 

簡単ではありますが、本当は怖い『マダニ』の話をしました。
ほとんど外出せず、これまでもマダニが付いたことのない動物には不要かもしれませんが、草むらに入っていく動物やこれまでマダニが付いたことのある動物はマダニの予防はしておいた方がいいかもしれません。
マダニ駆除薬については動物の生活様式によって適切な種類が変わりますので、興味がある方は担当医に相談してみてください。

一覧