当センターの沿革
2013年に、当時初めて動物専用に開発されたニプロ社製血液透析装置NCU-Aの購入を機に、小動物における透析医療の標準治療化を目指し、適応患者様を広く集める目的で当院内に設立されました。それから現在に至るまで小動物に対する腎代替え療法として、研鑽を重ねてまいりました。その結果、人の新生児、小児の体格しかない小動物に対して、大切な血液を失わない腹膜透析を、乏尿・無尿に陥った動物の腎臓が機能を回復するまでの期間の腎代替え療法と位置づけ、その透析効率の改良を実現し、実施しております。
腎臓病の治療に迷ったら
腎臓病はどの動物病院でも診断、治療、看取りが行われています。しかしながら、その検査や治療の内容は同じではありません。
腎臓病の治療は輸液が基本ですが皮下輸液や静脈輸液に反応せず、輸液が余って胸水、腹水、浮腫になって、体重が増えてしまっている場合や、「もう、打つ手はありませんので、退院されてお看取りください。」と、主治医の先生から告げられた時にはお力になれるかもしれませんのでご相談ください。
当院は院内に小動物腎臓病センターを開設し、犬のレプトスピラ症・ブドウ中毒や猫のユリ中毒などの急性腎障害や犬猫の萎縮腎・嚢胞腎などの慢性腎臓病の高窒素血症・乏尿・無尿など、特に犬猫の腎臓由来の高窒素血症(尿毒症)に対して酸塩基平衡補正・経食道チューブ栄養・透析医療による除水などを採り入れた積極的なアプローチを飼い主様がご希望される限り提供し続けております。
転院されなくても、また、主治医様のご紹介無しでもご相談、検査はお気軽にお受けいただけます。
代謝管理と恒常性維持について
安静時エネルギー要求量(RER)
慢性腎臟病の猫では自分では必要な餌と水を摂りきらないことが判っています。
当院では、頚部皮下から食道にチューブを入れて、腎臓病用の缶詰と必要量の水を合わせてピューレ状にして与えることをお奨めしています。
投薬も同時に行えますから従来の皮下補液に代わる治療です。
| Kg | RER | Kg | RER | Kg | RER |
|---|---|---|---|---|---|
| 0.5 | 41 | 11 | 423 | 22 | 711 |
| 1 | 70 | 12 | 451 | 23 | 735 |
| 2 | 117 | 13 | 479 | 24 | 759 |
| 3 | 159 | 14 | 506 | 25 | 782 |
| 4 | 197 | 15 | 533 | 26 | 806 |
| 5 | 234 | 16 | 560 | 27 | 829 |
| 6 | 268 | 17 | 586 | 28 | 852 |
| 7 | 301 | 18 | 612 | 29 | 875 |
| 8 | 332 | 19 | 637 | 30 | 897 |
| 9 | 364 | 20 | 662 | ||
| 10 | 394 | 21 | 687 |
透析医療について
透析医療とは
透析医療には腹膜透析と血液透析があります。
腹膜透析とは、腹腔内に注入した透析液中に腹膜を介して体内の有害物質や余分な水分を浸み出させた後に排液します。
血液透析とは、血液を体外に導き、血液に浄化処理を行った後に、体内に戻します。
透析は物理現象を利用した医療ですので適切な条件で行われた場合にはBUN、CREAに代表される尿毒症物質、リン、カリウム、余分な水分は必ず減少します。
この透析を利用して疾病の治療や予防を行うことをいいます。次のようなケースで通常医療に反応しない場合に透析医療の導入を検討いたします。
- 小動物における透析医療の適応
-
- 急性腎不全における電解質異常や酸塩基平衡異常の解消
- 慢性腎不全における急性憎悪の改善や周術期管理
- うっ血性心不全による肺水腫における除水
- 低体温症における血液の加温
- 中毒時における中毒原因物質の除去
腹膜透析の流れ
腹腔カテーテルの設置が必要です
透析するために透析液を腹腔内に注入、排液させる必要があります。
ヒト用腹膜潅流セットの腹腔カテーテルと呼ばれているカテーテルを全身麻酔下の手術で設置します。
この時、排液の妨げになる体網と呼ばれる腸管を包んでいるネットを切除します。
まず生命危急の状態から脱するための集中的な透析を実施します。
その後は安定した状態を維持させるための透析に移行します。
腹腔カテーテルの管理
埋設したカテーテルは滲出物が詰まったり動物が傷つけたりしないように丁寧に守られます。
血液透析の流れ
血液アクセスの確保が必要です
透析するために血液を体外循環させる必要があります。
ヒトでバスキュラーアクセスと呼ばれている血液アクセスを犬猫でも確保する必要があります。
動物では現在ヒト透析用血管カテーテルが用いられており、埋設には全身麻酔による手術が必要です。
まず1、2回目はゆるい透析から開始し、3回目からしっかり透析します。
高窒素血症により異常な浸透圧となった動物の血液を急激に透析により浄化すると、不均衡症候群に陥り生命が危険になることがあります。
* 不均衡症候群 …血液中の電解質のバランスや浸透圧が急激に変化することにより生じる不都合
血管アクセスの管理
動画は透析用カテーテルのヘパリンロック(上)とカテーテルのドレッシング(下)の様子
埋設したカテーテルは血液が固まって詰まったり動物が傷つけたりしないように丁寧に守られます。